夢見月夜に華ト僕<連載中>



カイと出逢う前の自分が、ひととおり回想された後、

ずっと欠けていた、闇に渦巻く記憶の波が、一気に押し寄せてきた。



勝手に、脳が研ぎ澄まされていく。


冴え渡った脳が、深い闇の奥底へとしまいこまれた、私の記憶を揺さぶる。



失くしたはずの過去が、私の中を、勢いよく侵食していく。



あぁ。

もう、止められない――




思い出す。

思い出してしまった。



私が、他人と心を通わせられないワケを。


心で触れ合おうと望んだカイを、恐怖にも似たバリアで、突き放してしまったワケを。



当たり前の感情が、私にはない。


答えは簡単だった。



やっぱり私は

ずっと、人間じゃなかった――


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