夢見月夜に華ト僕<連載中>
桜へと続く、一本道。
月が創る仮想の道。
しかし、どこをどう見たって、そんな無邪気なことをして許される年齢ではないはずだ。
あぁ、わからない。
どれだけ試行錯誤を繰り返しても、違和感なく、ぴたりとくる仮説は見つからなかった。
欲している問いの回答を持っている目の前の女は、
相変わらず、不敵な笑みを浮かべたまま、弧を描いた唇を開こうとしない。
変な奴――
さきほどよりも、さらに不信感は募ったが、
不思議と、今まで渦巻いていた恐怖心は、もう俺の中から姿を消していた。
もともと俺は、現実主義者。
そんな、非現実的、スピリチュアルな世界は信じていないのだ。
「アンタ、一体なんなんだ?」
少しばかり強気になった俺は、質問の内容を改め、再び女に問いかけた。
「私……」
「……」
一呼吸置いた女に、俺は無意識に、ゴクリと喉を鳴らしてツバを飲み込む。
そして女は、小さな声で呟く。
「……私、人魚なの」