夢見月夜に華ト僕<連載中>
こんなことを言っても、別に結衣に対して、全く愛情を感じないわけではない。
一緒に居ても、会話は耐えないし、飽きることなく楽しく過ごしている。
酔っていたのに、我ながらいい女を選んだものだ。
と、さすがに感心まではしないが、うっかりヤッてしまった相手が、コイツでよかった。
なんて、正直思ったりなんかもしている。
本人には絶対に言えないけれど。
それでも、妨害された安らぎの時間に、若干のイラつきを覚えてしまう。
けれど、たとえ携帯を持つ顔が、面倒臭さを丸出しにした、しかめっ面になったとしても、
無視できないのが、俺。
「もしもし、結衣?」
そんな心情を微塵も見せず、彼氏らしさを演出した、明快な声で対応する。
「海斗っ!」
ボタンを押すと同時に、結衣の弾んだ声が、電波にのって、まっすぐに俺の耳へと突き刺さる。
こんなにも嬉しそうな声を聞かされると、鬱陶しいと感じた自分に罪悪感を覚える。
そして、その声を聞いて、安らいだ気持ちになるのも、また事実であったりする。
「――」
「――」
「じゃあ、日曜ね!」
「あぁ」
少しばかりの他愛ない会話と、週末にデートの約束を取り付け、結衣との電話を終える。