夢見月夜に華ト僕<連載中>
――1ヶ月……
先ほどの電話で、結衣は、記念日のことを嬉しそうに話していた。
そして、頭の底からふと沸きあがってくる、記憶がひとつ……
そういえば、あの変な女に遭ったのも、確かこの頃だったな。
あの女は、一体何だったんだ?
結局、なんで全身びしょ濡れだったんだ?
あの時、何ひとつ解決されなかった疑問が、再び蒸し返ってくる。
あの女は、いつもあそこに居るのだろうか。
今日も……?
……そんなわけないか。
飲みかけだったビールに、もう一度手を伸ばしながら、あの女が鮮明に蘇ってくる。
あの不思議な表情が、頭の中をグルグルと巡る。
慌しいこの1ヶ月で、消えかけていた女は、俺の中でたちまち大きくなっていた。
あぁ、駄目だ。
……気になる。
いったん気になり出すと止まらないという、バカな性格が出てきた。
この厄介な気質のせいで、今まで俺がどれだけ無駄骨を経験してきたことか。
どれだけ、損をしてきたことか……
それでも、喉を通っていくビールに、いつものような快感を味わえない自分に、
やっぱり、気になっているのだということを、痛感させられる。