夢見月夜に華ト僕<連載中>



――1ヶ月……


先ほどの電話で、結衣は、記念日のことを嬉しそうに話していた。



そして、頭の底からふと沸きあがってくる、記憶がひとつ……


そういえば、あの変な女に遭ったのも、確かこの頃だったな。



あの女は、一体何だったんだ?

結局、なんで全身びしょ濡れだったんだ?


あの時、何ひとつ解決されなかった疑問が、再び蒸し返ってくる。



あの女は、いつもあそこに居るのだろうか。

今日も……?


……そんなわけないか。



飲みかけだったビールに、もう一度手を伸ばしながら、あの女が鮮明に蘇ってくる。

あの不思議な表情が、頭の中をグルグルと巡る。


慌しいこの1ヶ月で、消えかけていた女は、俺の中でたちまち大きくなっていた。



あぁ、駄目だ。

……気になる。


いったん気になり出すと止まらないという、バカな性格が出てきた。


この厄介な気質のせいで、今まで俺がどれだけ無駄骨を経験してきたことか。

どれだけ、損をしてきたことか……



それでも、喉を通っていくビールに、いつものような快感を味わえない自分に、

やっぱり、気になっているのだということを、痛感させられる。


< 18 / 114 >

この作品をシェア

pagetop