夢見月夜に華ト僕<連載中>
桜
……そうだよな。
は、はは。
いるわけない……か。
気落ちした気分があったのも嘘ではないが、俺の中では正直、安堵の方が大きかった。
だって、いつも先のことを考えて行動する俺が、
もしもあの女に遭遇してしまった場合、今度はどうしようかなんて、驚くほど何も考えていなかったから。
「アホくせ。帰ろ」
誰からの返答もないことを知りながら、ワザと大きな声で独り言を呟くと
俺は、先ほどの倍以上の歩みで、公園の出口へと歩き出した。
なんだか心が晴れない気もするが、仕方ない。
第一、気にし続けたところで、これ以上もう、どうしようもないことなのだから。
あの日のことは忘れるしかないのだ。
忘れよう。
1ヶ月の時を経た女は、ようやく今俺の中でゴミ箱へと処理された。
そして、もうすぐ出口のすぐ傍でまっているバイクに、辿り着こうという時だった――
「待って――!」