夢見月夜に華ト僕<連載中>
約束
「ねぇ、海斗。また、会えるよね?」
サクラは、子供のように澄み切った、無邪気な笑顔と瞳で、俺を見つめて言う。
「あぁ。いつか……な」
そんな無垢なサクラに、俺は“いつか”なんていう、もっとも卑怯で、曖昧な言葉を返した。
“いつか”なんていう、あやふやな言葉は、大抵、いつだって果たされないことがほとんどだ。
ガキ同士が、見えない遠い未来のために使う、本気だが、必ず果たされることのない誓いか、
オトナが、その場しのぎで使う、逃げるための言葉。
……ならば、俺は?
俺は……
本気で守るつもりの約束というわけでも、
永遠に果たすつもりのない、無責任な約束というわけでもなかった。
ただ、俺は迷っていた。
サクラを、俺の人生の道に、入れてしまってもいいのだろうか。
サクラの存在を、今の出来事を、確かな記憶の一部に、埋め込んでしまってもいいのだろうか。
俺にとってのサクラは、まだどこか抽象的で、宙に浮いているような、
確かに目の前で微笑んでいるにも関わらず、どこまでもぼやけた存在だった。
それはきっと、他の誰でもない。
――サクラのせいだ。
こんな、奇妙だとしか言いようのない、不思議な出逢い……
あまりにも、にわかには信じられないことだらけで、
完全に受け入れてしまうことに、俺のどこかが、まだ抵抗し続けていた。