夢見月夜に華ト僕<連載中>
謎の女
「あぁ、つまんねぇ!」
誰もいない、静まり返った夜の公園。
風ひとつも存在しないそこは、木々さえも消えてしまったように、闇の中に包まれている。
頭上には、欠け始めた中途半端な月。
こんなちっぽけな明かりじゃ、何ひとつ照らせやしないのに。
こいつは、光ることになんの意味があるのだろう。
そして、俺は今その中に、それよりもっと意味もなく、一人で立っている。
この春、大学進学と当時に実家を出て、一人暮らしを始めたばかりの俺。
別にこれといった夢もなく、なんとなく勉強は人より少しばかりできることを理由に決めた、大学。
ただ、漠然と何かとうるさい親から離れたいがために、家から遠い大学を選んだ。
生活費も、学費も全部親に頼りきっているくせに、
たった6畳しかない一人の城を持っただけで、やっと自由になれた気がしたのは、つい最近の話。
知らない街。
知らない人。
――何かが変わるかもしれない。
何かを、見つけたい――
そんな前向きな期待も、少なからず胸に秘めていたと思う。