夢見月夜に華ト僕<連載中>
「なんなんだよ、お前は!知ったような口ばっかききやがって!俺は――」
気付けば俺は、ベンチから立ち上がり、サクラを見下ろしながら怒鳴りつけていた。
それでもサクラは、ひるむ素振りすら見せず、俺を見上げて笑っている。
上にいるのは俺なのに、どうしても、俺の方が見下されているような気がして、
とてつもなく、惨めで、哀れな気分になった。
「クソッ。なんなんだよ……」
そんなサクラの態度に、無意識に固く握り締めていた拳は、自然と緩み、
おもどかしくて、どうしようもなく燻った想いが、目まぐるしいスピートで、俺の全身を駆け巡った。
サクラの言ったことは、悔しさもすっ飛んでしまうくらい、完全な図星だった。
感情的になってしまったことが、その何よりもの証拠。
こんなにはっきりと、事実を口にされたことなんて、当然だけど今までに一度もなかった。
大体、周りにいる奴らだって、大抵は俺と同じだろうし。
それが、普通ってもんだろうし。
だから俺は、それを恥じる理由など、ないはずなのに……
それなのに、怒鳴ってみただけで、実際何も言い返せない自分に、無性に腹が立つ。