夢見月夜に華ト僕<連載中>
「俺は、何?」
サクラは、余裕の表情のまま、俺に言葉の続きを求めてくる。
だけど、俺は……
一体、何を言おうとしたのだろう?
正しかったはずの道を、俺はサクラの光の前に見失っていた。
「俺は、そんなに弱くない。また会ってやるよ」
くだらない意地だったのかもしれない。
ムキになる必要なんて、なかったのかもしれない。
それでも俺は、この女の放つ光の中に、手を伸ばしてしまった。
その先に待っているのは、きっと闇だと気付いていながら、
サクラの姿は、俺の目に、確かに眩しく映り込んだ。
「この時間なら、いつでもいいから。待ってる」
待ってましたと言わんばかりに、サクラは口角を上げる。
俺は、サクラが仕掛けた罠に、まんまと引っ掛かってしまったのだろうか。
この時の些細な決断が、俺の中に灯る、まだ燻った小さすぎる火を
何もかもを呑み込んでしまうほどの、大きな炎にしてしまうなんて……
俺を覆っていた薄っぺい皮なんて、いとも簡単に焼き捨ててしまった。
これは、奇跡でも、
偶然でもない。
運命だったのだと……
そう、信じていたい。
永遠で、刹那な幸福の日々の始まり。
そんな瞬間だった――