夢見月夜に華ト僕<連載中>
「海斗ー!」
昼になり、いつものメンバーで食堂に向かう途中、
ごった返す群れの中から俺を探し出し、呼ぶ声がした。
ヒールの高い靴で、いかにも走りにくそうに、一生懸命駆け寄ってくる、可愛い姿。
――結衣だ。
なぜだか照れ臭くて、無意味に隠したがった制服時代とは違い、
ここでは、男女が肩を並べて歩くのも、自転車の二人乗りも、日常の風景。
年を重ねるごとに、取り巻く常識は変わる。
こんな行動も、今ではごくごく普通の出来事なのだ。
「お昼、一緒に食べたいなって思って」
エヘヘと舌を出して、照れ笑いを浮かべながら、二人分の弁当を胸元で揺らす、甘えた目をした結衣。
そういえば、今日は俺達の一ヶ月記念日だ。
昨日の電話越しに、伝わってきた弾んだ声。
きっと結衣は、当然弁当なんて作るはずのない俺にサプライズのつもりだろう。
だから俺は、この可愛い行動に、喜べばいいだけのことなのだ。