夢見月夜に華ト僕<連載中>
「ワッ!」
「ウワッ!?」
ドンッと後ろから、無防備な背中を押された俺は、なんとも間の抜けた声を出して、ビクリと肩を上げた。
その瞬間から、わずか数秒足らず――
「サ……クラ」
俺は、いつの間にか期待だけに支配されている心を感じながら、ユックリと振り返る。
少しだけ下に移した視線のその先にいたのは、言うまでもなく、サクラだった。
「えへへ。ビックリした?」
「……」
呆気に取られた顔をしている俺に、サクラは相変わらず、
無邪気なイタズラっ子のような笑みを浮かべて、満足そうに舌を出してみせる。
「行こっ!」
サクラはそう言って、すかさず俺の手を取って歩き出す。
……不覚。
不意のことだったとはいえ、初めてサクラに触れたことに、俺の刻む鼓動は、リズムを狂わせていた。
ほんの少し、手が触れただけだ。
こんなことぐらいで動揺するほど、俺は純粋でもないはずなのに……
クソ。格好悪いな。
まるで、ガキみたいだ。
何ひとつ気にする素振りも、こんな俺に気付く様子もないサクラに、
俺は、そのまま手を引っ張り続けられ、この前と同じベンチに連れてこられた。