夢見月夜に華ト僕<連載中>
「……あぁ、疲れてるよ」
訳のわからない爽快感と共に、俺は両腕を真っ暗な空に伸ばして、
うーん、とワザと大袈裟な伸びをしてみせた。
「なんでつまんないの?」
不思議そうにサクラは、首を傾げる。
「なんでだろう。普通だから……かな」
「普通?いいじゃない。私は羨ましいよ」
「それ、慰めてくれてんの?」
「別に慰めてるわけじゃないよ。本当にそう思うから」
本当、不思議な奴だ。
サクラの言葉には、なぜだか心地よさを覚える。
それから俺の心は、サクラの引力に引き寄せられるかのように、ポツリポツリと言葉を零し始めた。
恥ずかしくて、誰にも話したことのないような、
当たり前すぎて、誰にも話せないようなことを。
普通がつまらないとか、
好きって気持ちがわからないとか……
心の中で、ムズ痒くうごめく、どうしようもないもどかしさを――
こんなバカらしいこと、真面目な顔して、誰に言えるだろう。
だけど、サクラなら……
サクラになら、大丈夫だと思った。
そんな俺を笑ったりしない。
いや、サクラになら笑われたって構わない。
それはやっぱり、サクラという存在自体が、現実味を帯びていないから。
だからこそ、こんな変なこと、話せてしまえるのかもしれない。