夢見月夜に華ト僕<連載中>



こうして、俺の単調な日常には“サクラ”という非日常が、新しく加わった。



特に約束を交わしているわけではないが、いつの間にか、

毎週金曜日の夜が、俺とサクラの時間となっていた。



誰も知らない、秘密のひととき――

なんて、心の中でほくそ笑んでいる自分が、薄気味悪く、その一方で妙に快感でもあった。



昔の話、学校の話、友達の話、バイトの話……

俺達は、他愛もない会話で、時間を繋いでいた。


しかし、それは全てが、俺の話。



ペラペラと話してばかりの俺もどうかと思うが、

サクラは、自分のことに関して、頑なに口を閉ざしてしまう。


しかしそれは、隠しているというよりは、本当に何も話すことがない、というような感覚を俺に与えた。



それでも、途切れることのない会話。


サクラとの時間は、本当に速かった。

いつだって、気付くと、腕時計の針は、12時の日付変更線をまたいでいる。



俺の方は、毎回このまま朝日を迎えても構わないつもりだった。


実際、サクラと会うようになってから、俺の土曜日の予定は意図的に、空白になっていたくらいなのだから。



しかし、サクラの方は違った。


深夜2時を過ぎる頃になると、決まって落ち着きを無くしだす。

しきりに俺の腕を気にして、時間を確認しようとするのだ。


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