夢見月夜に華ト僕<連載中>
そうなったら、終了の合図。
俺は、手を振るサクラに見送られて、公園を後にする。
これが、二人の間にできた、暗黙のルールだった。
この後、サクラを待っているのは何なのだろう?
どうしていつも、サクラは俺が居なくなるまで、公園から出ようとしないのだろう?
もちろん、当たり前に沸いてくるこの疑問を、サクラ本人にぶつけてみたこともあった。
けれど――
「だってカイ、眠いでしょ?」とか「私はこの池に住んでるから」
とか、
適当にはぐらかされて、いつも流されてしまうだけ。
しつこく聞いたところで、ムダなことだというのはなんとなくわかるから、
俺はそれ以上、このことを問い詰めることをしなかった。
それに“サクラ”を暴いてしまうことは危険だと、俺の体は感じていた。
このささやかな時間を、消し去ってしまいそうな恐怖心を、
真実を聞き出すことを躊躇する俺の本心は、はらんでいた。
だから、サクラのことは気にならないといったら、当然嘘になるけれど、俺は今この時間を過ごして、
サクラと向き合っていられることだけで、十分満足していたから、それでよかったのだ。