夢見月夜に華ト僕<連載中>
それでも、サクラとの時間以外で、俺の生活が目に見えて一変するようなことは、特になかった。
サクラとのことを、誰に打ち明けることもなかったし、
なんといっても、そもそもこんな話、正直に言えてしまえるわけがなかった。
どうせ、周りの奴らには“やめておけ”と、そう軽くあしらわれるのがオチだ。
事実、俺だってそんな話を聞かされれば、確実にそんな反応をするだろう。
そうだ。
この行為は、決して肯定的にとらえられることはないのだ。
そんなことはわかっている。
わかっているが、俺はもう、知らず知らずのうちに、
いつでも後戻りできる予防線に、微かにすがりながら、前へ進もうとしていた。
そして、たったひとつ……
ひとつだけ、変わったことといえば、なぜだか、以前は素直に耳に入ってきたラブソングが、
二日酔いのような、気持ち悪さを誘うようになったことだった。
どこかが、何かが、胸に違和感を誘う。
集中して聴こうものなら、わずか数秒で、酷い嫌悪が体中を掻きむしるように、襲うのだ。
気に入っていた歌でさえ、俺はいつの間にか聴こうとしなくなった。
しかしまぁ、そんなことは指先ひとつ、機械のスイッチにさえ触れなければ、すぐに解決する問題だ。
ついでに、よく考えてみたら、四六時中、街は音楽だらけだけれど、
そこまでは神経質にならずに済んでいたから、別に気にするほどのことではなかった。