夢見月夜に華ト僕<連載中>
多分……
多分なんだけれど、大袈裟に言ってしまえば、この世でコイツの存在を知っているのは、俺だけで
サクラは、俺だけのものなのだという優越を、俺は密かに所持していたのかもしれない。
この世に存在する、れっきとした人間なのだとわかっていながら、
一方では、サクラの醸し出す不可思議さが、俺にそんなマヌケな感覚を与えていたのだ。
“サクラには俺しかいない”
甚だ愚かな勘違い。
けれど、今の俺は……?
これじゃあまるで、立場が逆だ。
サクラに依存していたのは、俺の方だった。
次はどんな顔をして、サクラに会おうか。
今日の話は、本人にしてしまってもいいのだろうか。
サクラは、どんな顔をするだろう。
秘密がバレたことに驚くだろうか。
俺がストーカーみたいな真似をしたことを怒るだろうか。
でも、やっぱりこのまま、知らない振りをした方がいいのだろうか――
この夜の俺は、明け方近くまで、シワだらけの布団の中に潜って、
次にサクラを前にした自分をイメージしていた。
あれこれと試行錯誤した結果“もう二度と会わない”という結論にも、何度か至ったが、
なんだかんだ言い訳をこしらえて、結局はすぐに削除された。
やっぱり俺は、サクラを……
サクラに――