夢見月夜に華ト僕<連載中>
存在
「相変わらずカイはつまんない顔してるね」
「ウルサイよ」
あれだけ悩み抜いたにも関わらず、次にサクラと向き合った瞬間には、
まるで、何事もなかったかのように、振る舞っている自分がいた。
いつもの顔で。
いつもの場所で。
――いつものように。
もちろんサクラは、俺の内心なんて、知る由もない。
俺達の間に在る、名もなき繋がりは、きっと、俺がサクラに真実を問い詰めた瞬間に、
脆く、淡く、消え去ってしまうだろう。
その後に現れるものが、ただの空白なのか、
それとも、形を変えた新たな繋がりなのか……
俺は、その先を考えるのが恐かった。
そして、もっとも恐れるべきことは、
今ではもう、否定しきれない安らぎを与えてくれている、この空間を失ってしまうこと――