夢見月夜に華ト僕<連載中>
「マジで!?お前それ、ヤバくね?」
男の一人が、驚きに満ちた、ワントーン高い声を上げる。
「大丈夫だって。ペットみたいなもんだろ?」
「いや……どこの誰かもわからない女なんて、怪しいすぎるだろ」
その男は、飄々と答える男に、始終、怪訝な様子をみせていた。
目の前で繰り広げられる、キテレツな会話。
その内容が、サクラに的を置かれていることは、すぐにわかった。
俺は無意識に、よりいっそう、その会話へと耳を傾けていく。
「だってよ、なんでもデキるんだぜ。ラッキーじゃん」
「ラッキーって、お前……」
楽観的なソイツに、友達らしき男は、もはや呆れ返って、語尾をすぼめていく。
この友達が言うことは、もっともだ。
俺だって同感だ。
どこの誰かもわからないような危険な女を、無防備に受け入れるなんて、有り得ない。
俺だったら、絶対にそんなことをしない。
体中に、常識を巻きつけた俺が、できるわけがないのだ。
……バカな奴。
そう見下しながら、サクラを傍に置いているコイツを、
俺は、どこかで羨ましいと感じていたような気がする。
「でもなぁ……」
戦意喪失した話し相手に、ここでサクラの話は終了なのかと思っていると、
声色の低い、今さっきまでとは違う、若干の真剣味のこもった口調で、ヤツは話を続けた。