夢見月夜に華ト僕<連載中>



「マジで!?お前それ、ヤバくね?」


男の一人が、驚きに満ちた、ワントーン高い声を上げる。



「大丈夫だって。ペットみたいなもんだろ?」

「いや……どこの誰かもわからない女なんて、怪しいすぎるだろ」


その男は、飄々と答える男に、始終、怪訝な様子をみせていた。



目の前で繰り広げられる、キテレツな会話。

その内容が、サクラに的を置かれていることは、すぐにわかった。


俺は無意識に、よりいっそう、その会話へと耳を傾けていく。



「だってよ、なんでもデキるんだぜ。ラッキーじゃん」

「ラッキーって、お前……」


楽観的なソイツに、友達らしき男は、もはや呆れ返って、語尾をすぼめていく。



この友達が言うことは、もっともだ。

俺だって同感だ。


どこの誰かもわからないような危険な女を、無防備に受け入れるなんて、有り得ない。



俺だったら、絶対にそんなことをしない。

体中に、常識を巻きつけた俺が、できるわけがないのだ。



……バカな奴。


そう見下しながら、サクラを傍に置いているコイツを、

俺は、どこかで羨ましいと感じていたような気がする。



「でもなぁ……」


戦意喪失した話し相手に、ここでサクラの話は終了なのかと思っていると、

声色の低い、今さっきまでとは違う、若干の真剣味のこもった口調で、ヤツは話を続けた。


< 60 / 114 >

この作品をシェア

pagetop