夢見月夜に華ト僕<連載中>
「いや、別に意味はないだけどさ」
「そっか。カイは?」
いつだって、俺の方が先に答えを出すというのは、サクラとの会話の中にできた、暗黙のルールだ。
「俺は……満月は嫌いだな」
「嫌い?今、好きな月の話じゃなかったっけ?」
「そうだけどさ……」
真剣に話す俺を茶化して、おどけてみせるサクラ。
サクラは、いつだって変わらない笑顔で、くだらない会話にも付き合ってくれる。
サクラのそんなところが
俺は、好きなんだ……
「ねぇ。どうして嫌いなの?」
「なんでだろう。あとは欠けるしかないってとこが、虚しいから?」
「……」
「なんだよ」
大きな目をパチパチと忙しく動かして、サクラは固まって俺を見つめる。
「いや、ちょっとびっくりして」
「何がだよ」
「カイって意外とロマンチストだったんだねぇ……」
サクラは、俺をからかうように、せせら笑いを浮かべる。
「そう。意外とね」
普段の俺なら、こんなこと、絶対に言ったりしない。
サクラの前だからこそ、歯の浮くようなセリフを、恥ずかしげもなく、すんなりと言えてしまうのだ。
まるで、俺であるのに、俺ではないどこか遠い場所から、言葉が生まれているような……
そんな、不可解な感覚。
やっぱり、コイツは不思議なヤツだ。