夢見月夜に華ト僕<連載中>
「カイ」
「ん?」
「私はね……満月、好きだよ」
「え――」
サクラの思いがけない言葉に、今度驚かされたのは、俺の方だった。
……驚いた。
てっきりサクラは、不完全である、欠けた月を好むものだと思っていたから。
もちろん、理由なんて特にない、ただの俺の偏見であり、イメージでしかないのだけれど。
サクラには、不似合いな気がする。
なんとなく、サクラと満月という存在が、対称に位置するようなもののような……
「何?どうしたの?」
言葉に詰まって黙り込んだ俺に、サクラは不思議顔でたずねる。
「いや、そっちこそ、意外だと思ってさ」
「そ?」
なんでもないように、猫のような愛らしい仕草で、首を傾げてみせる。
「なんで好きなの?」
「んー……一番明るいから!せっかくだったら、自分の姿全部見てもらいたいでしょ?」
ねっ?と、得意そうに歯を見せるサクラに、俺は素直に頷いた。
「別に次の日、欠けちゃったっていいじゃん。今その時に、一番綺麗でいるんだったらそれでいいでしょ?」
「……そうだな」