夢見月夜に華ト僕<連載中>
その言葉に、俺はギクリと胸を躍らせた。
“もっと今を見ろ”
そう言われているような気がして……
別に、サクラにそんな回りくどい意図なんて、ないんだろうけど。
思えば俺は、ずっとそうだった。
何をするにも、先のことばかり考えて、今を生きてきた。
昨日考えた先は今で、今考えるその先も、また、いつかは“今”という時になっているというのに。
いつだって、そんなバカげたスパイラルを、延々と繰り返してばかりいた。
けれど、きっとサクラにとっては、今、目の前に広がるものが、全てなのだろう。
だからこそ、こんな風に、適当な男のところに転がりこんだりできてしまうのだろうか。
つい、そこに繋がってしまいそうになって、歪みかけた思考を、俺は断ち切る。
どちらがいいことで、
一体、どちらが正しいことなのか。
どんなに沈思したって、その真偽はわからないけれど、
少なくとも俺は、サクラが言う言葉を嫌いにはなれない。
それだけは、確かだった。
「なぁ、サクラ」
「何?」
「俺と一緒に住まないか?」
「へっ!?」
上ずった声を上げて、サクラの瞳が真ん丸になる。
でも多分、その唐突な言葉に、もっと驚いていたのは、俺自身だった。