夢見月夜に華ト僕<連載中>



どうして、こんな言葉が、滑り落ちてきてしまったのか……



後先考えない行動は、しないのではなかったのか。


どこの誰かもわからないようなヤツを、受け入れる愚行など、安全主義の俺が、するはずないだろう?



そうやって、ついこの前、あの男をあざ笑ったばかりじゃないか。



自分は、こんな愚かなことはしないはずなのに……


なのに、どうして――



ただ、サクラの話に感化されて、雰囲気に流されているだけなのかもしれない。


たとえそうであったとしても、考えなしに、こんなことを言えてしまった自分が、

まるで、自分ではないようで、にわかには信じられずにいた。



ただ、今、目の前のある現実。


サクラと並ぶ自分。

サクラの存在を失うことを恐れる自分。



そんな自分が、確固として、俺の中には存在していて、この突拍子もないことを言わせた。


他の誰でもない、俺だけの意思で。



それだけは、確かだった。



「でもさ、カイ。それはマズイんじゃない?」

「え……何で?」


サクラが発した“マズイ”という言葉の意味を理解できずに、俺は随分とマヌケな声を出していた。


断られることは、どこかで覚悟していたが“マズイから”という理由は、どういうことかわからなかった。


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