夢見月夜に華ト僕<連載中>



勘のいいサクラのことだ。

きっと薄々、俺の言いたいことは感づいていたと思う。


けれども、感情の読み取れない表情と声で、俺の出方をうかがっているようだった。



「今、サクラが一緒に居る男」


俺は躊躇することなく、核心へと触れていく。


俺は、サクラを追い詰めたいわけではなく、ただ、その先に繋げていきたいだけだった。



サクラと俺に繋がる、未来に……



「……もぉ。カイ何言ってるのよ。意味わかんな――」

「サクラ。隠さなくてもいいから。多分、きっと、俺ほとんど知ってると思うから」


サクラが、惚けようとした真意はわからないけれど、俺はサクラの言葉を制して、

今回ばかりは、引き下がるまいと、なおも言葉を続けた。



サクラを手放さずにいられる方法は、

サクラを俺だけの傍に置くためは……


それは決して、避けては通れない道だったから。



「サクラ……?」


瞳を伏せて、束の間の静寂をつくり上げたサクラは、次の瞬間、

夜空に向かって、あからさまに大きなため息を吐いてみせた。



「なぁんだ!全部バレてたのか。ふ~ん。なんだなんだ……」


それから、独り言のような言葉を呟きながら、清々しい声と、晴れ晴れとした表情で、

観念したかのように、サクラは、月に向けていた視線を、俺に変えて話し始めた。


< 71 / 114 >

この作品をシェア

pagetop