夢見月夜に華ト僕<連載中>
俺達が共有した時間なんて、数えるほどしかないかもしれないけれど、
サクラを見ていた俺なら、それくらいに気付けていた自信はある。
だって俺は、ここ最近は特に、少しでも時間が許せば、
とにかく常にサクラのことで、頭をいっぱいにしていたから。
いつも崩さないその笑顔は、サクラが手作りした、バリアだってこと。
その内側を、誰かに見せることは、決してないってこと。
なぁ、サクラ。
俺だったら、君の中に触れることを許されると思ったのは、ただの勘違いだったのか?
君に触れたいと、願った俺が、バカだったのか?
サクラ……
教えてくれよ――
「アイツに、追い出されたらどうするの?」
最後の悪あがきの切り札として、俺は、コンビニで耳にしたあの男達の会話を、サクラに伝えた。
サクラはそれを聞いて、一瞬ひるんだような顔をしたように見えたけど、
やっぱりそれでも、俺の胸に飛び込んでくるようなことはなかった。
「それなら、またアイツと同じようなヤツを探すだけよ。あんなのいくらでもいるし、誰だっていいんだから……」
「それなら俺が……俺がアイツになるから」
「え?」
「サクラの心には触れない。何も求めない。約束する」
我ながら、執念深い男だ。
必死にすがり付く自分が滑稽で、なんだかおかしかった。
それからも俺は、そのまま黙り込んでしまったサクラを、粘り強く押し続けた。
もう、止まらなかった。
後には引けなくなっていた。