夢見月夜に華ト僕<連載中>



いつの間にか、俺とその謎の物体とを隔てる空間は数メートルという距離になっていた。



そこまで近付けば、いくら目も勘も悪い俺でもわかる。


明らかに人間。

……それも、女だ。



こんなところに女?


しかも、俺がこんなにも堂々と近付いているというのに……

そいつは全く気付く様子もなく、それどころか少しも動きを見せない。



俺は、薄気味悪くなって、急激に体が冷えるのを感じた。


今まで、安全な人生を歩んできた俺は、典型的なビビリ体質。



普通じゃないことはできないんだ。

危険なことには足を踏み入れられないんだ。



……このまま帰ろう。


これまでの俺自身からみて当然の決断を下し、俺は即座に足先の向く方向を、グルリと180度転換した。


< 8 / 114 >

この作品をシェア

pagetop