夢見月夜に華ト僕<連載中>
いつの間にか、俺とその謎の物体とを隔てる空間は数メートルという距離になっていた。
そこまで近付けば、いくら目も勘も悪い俺でもわかる。
明らかに人間。
……それも、女だ。
こんなところに女?
しかも、俺がこんなにも堂々と近付いているというのに……
そいつは全く気付く様子もなく、それどころか少しも動きを見せない。
俺は、薄気味悪くなって、急激に体が冷えるのを感じた。
今まで、安全な人生を歩んできた俺は、典型的なビビリ体質。
普通じゃないことはできないんだ。
危険なことには足を踏み入れられないんだ。
……このまま帰ろう。
これまでの俺自身からみて当然の決断を下し、俺は即座に足先の向く方向を、グルリと180度転換した。