夢見月夜に華ト僕<連載中>
俺が、大学もバイトもない休日は、たまにサクラが出掛けたいと言う。
だから俺達は、映画や買い物と、まるで恋人同士のように手を繋いで街を歩いた。
サクラが何も言わない日でも、なるべくなら傍にいたいと望んだ俺は、
ほとんどの時間をアパートの中で過ごした。
だけど、そんな本音を言ってしまえば、サクラは消えてしまうかもしれない。
だから俺は、レポート作りとか、何かと理由を付けて、サクラと同じ空間で過ごした。
そして、そうなってくれば、自然とそれに伴って、友達付き合いも、疎かになってくる。
もちろんそれは、例外なく、結衣にいたっても同じことだ。
それでも、今の俺には、周りの不審な声など、全く耳に入ってこなかった。
そんなことは、俺にとってくだらないことであって、いちいち気になんてしていられない。
だって、もっともっと大事なことで、俺の頭は四六時中、支配されていたのだから――
俺はきっと、サクラという魔法にかかっていたのだと思う。
「来てみる?」
「え?」
「大学」
俺は、サクラの一言に、ほとんど何かを考えることもせず、生まれた感情そのままに言葉を返していた。
「いいの!?」
サクラの瞳が、一瞬で輝きを増す。
「もちろん」
もっと目を輝かせたのは、多分、俺の方だった。
一日中サクラと一緒にいられるなんて、想像するだけで、胸が高鳴る。