夢見月夜に華ト僕<連載中>
手に入れたふたつの“存在”を、浮かれた気分で、その日の手土産に持ち帰ると、
それに反してサクラは「別にいいのに」と、苦笑を浮かべながら言った。
「ただの思い付きで言っただけだったのに」と、少し困った顔をしたサクラから、
感謝の言葉も、喜びの声も聞くことはできなかった。
それから、そんなサクラに、あからさまに落ち込んだ素振りを見せてしまった俺へサクラは、
「もっと可愛い名前にしてほしかった」と、いつものおどけた笑顔で、重苦しくなりかけた雰囲気を、元に戻した。
サクラを世間に紛れ込ませたいと思ったのは、サクラ本人ではなく、俺の方だったのかもしれない。
もっともっと、俺の傍に来てほしかった。
俺の世界に近付いて欲しかった。
それでも、俺は信じていた。
サクラのためだから。
サクラが、喜ぶから……と。
暗闇の中から、半ば無理矢理、君を引っ張り出して、
光の中に置いても、いつも君の影ばかりを追いかけているような……
そんな卑屈な感覚に、俺は満足していなかったのだ。
早く、早く……
本物の君に触れたかった。
“サクラのため”
そう言い聞かせたって、結局全ては、俺の願い。
ただのエゴに過ぎなかったのかもしれない――