夢見月夜に華ト僕<連載中>
「おい!聞いてるのかよ」
意識半ばで聞いている俺に、気付けば声を荒げ、興奮を露にするケンジがいた。
そんな姿の滑稽さに、俺は思わず吹き出してしまいそうな衝動を、必死で堪えた。
何も語ろうとしない俺に対して、ケンジはさらに攻め立てることを止めない。
「最近、変な女といつも一緒なんだろ?」
「……変な女?」
バカに熱くなりすぎているケンジの一言に、黙って様子見をしていた俺の熱も、少しだけ上昇した。
「その女とは、どういう関係なんだよ」
俺のことを心配しているというタテマエだったはずが、いつの間にやらサクラの質問攻め。
やっぱり結衣のためという目的が、大きな比重を占めていたのだと、改めて実感する。
当たり前に、完全結衣派のケンジは、何ひとつ知りもしないサクラの存在を、
明らかな嫌悪感に溢れた口調で話してくる。
そんなケンジに、いい加減、疎ましくなってきた俺は、
イヌみたいなコイツを、一発で黙らせる、最大の一発を放つことに決めた。
「なぁ、ケンジ」
「なんだよ!」
「お前、結衣のこと好きだろ」
「――ッ!」
……予想通り。
途端、マシンガンのように止まらなかったケンジの口は、
時を止められたかのように、ピタリと静止した。