夢見月夜に華ト僕<連載中>
「サ、クラ……」
どうして――
声にならない声で呟く。
そこには、まさか予想だにもしていなかった、サクラの姿があった。
無数の色が渦巻いていた頭の中は、一瞬にして白く染めらた。
恐怖に似た感情が、俺を襲う。
「……今の話、聞いてたのか?」
情けなく唇を震わせながら、恐る恐る尋ねる。
――“心には触れない”
だってこれが、俺達が同じ時間を共有するための、絶対条件だったから――
サクラを見つめたいと思うのに、サクラが創り出す沈黙が、表情が、瞳が恐くて……
俺は、視線のやり場を定めることができず、サクラの言葉を待つ間、始終泳がせ続けた。
わずか数秒足らずの沈黙は、俺の心臓ごと掴んで震わせるには十分な、長い長い時間だった。
願いの強さが拳に表れる。
サクラ……
頼むから、いつもの笑顔を、俺に見てくれ――
しかし、サクラの唇から、零れるように出た言葉は、さらに俺の予想を越えたものだった。