夢見月夜に華ト僕<連載中>
「……ありがとう」
「え?」
「ありがとう」
「サクラ……」
「本当に、ありがとう――」
まるで、確かな意志が込められていくかのように、次第に強まっていく言葉。
うわ言のように、何度も同じ台詞を呟くサクラの瞳には、いつの間にか、透明な光が溢れていた。
俺は、そんなサクラを前にして、何もできず、何をすればよいのかもわからず、
ただただ、この現実を受け入れるために、サクラを見つめていた。
繋がったのか……?
俺達は。
俺は、サクラの心に触れることを、
サクラの心の中へ入ることを許されたのか?
その答えは、サクラの緩んだ表情と、初めて目にする涙が、何もかもを物語ってくれていた。
そして、やっとのことで動き出した俺の心と身体で、愛しい存在を抱きしめる。
心も身体も、全部全部包み込むように、ひたすら強く……
堪えきれない想いの丈を詰めた力は、華奢なサクラの身体を押し潰してしまいそうな気さえした。
それでも俺は、その力を抑えることはなかった。
サクラも何も言わず、ただ俺の胸の中に収まっていた。
けれどそれは、されるがままではなく、サクラの意志なような気がした。
俺は、サクラの身体を噛み締める。
初めて感じるサクラの体温は、心地よかった。
思ったよりも細くて、それでいて柔らかくて、暖かくて……
サクラの体温を感じながら俺は、この胸に募る想いが、何もかも、できるだけ、伝わればいいと……
そう願った――