Cry!Cry!Cry!




練習試合の帰りのバス。


カーテンを閉めて薄暗い中、

みんな疲れて寝ていた。



あたしの1個前の席に座っているヒカルくんも静か。


というか閉まっているカーテンをもぐっている。



外を見ているのかな?・・・寝ているのかな?・・・



気になって気になってあたしもカーテンをもぐってみた。



ヒカルくんはあたしに背を向けた状態で腕枕にしていた。



あ・・・やっぱり寝てるんだな・・・。



ヒカルくんの甘い香水のにおいがする。



このにおいが好き。



だから、ヒカルくんが好き。



いや、においが好きだからヒカルくんが好きって事じゃなくて


ヒカルくんが好きだから、ヒカルくんのにおいも好き。




ぜんぶ好き。





ひょぃっとヒカルくんはあたしに顔を向けた。


「ひゃっ!」と叫びそうな口をつぐんだ。




「こんにちはっ♪」


「こっこんちは…。」


ドギマギするあたしにニコニコと笑うヒカルくん。



ひそひそと話すこの小さい空間であたしの体はどんどん熱くなった。


ヒカルくんといっぱい喋りたい。


いっぱい知りたい。


あたしのことも知ってほしい。


でも、言葉が浮かばない。


言葉が出ない。

< 106 / 267 >

この作品をシェア

pagetop