Cry!Cry!Cry!
逆境ともどかしさ
~Yumi~
「おはよっ!」
目の前からあたしに笑いかけるヒカルくんが通りすぎた。
あたしはただ黙って横を通り過ぎた。
最近のあたしはあの告白以来、
ヒカルくんの事を避けつつある。
自信がないのだ。
ヒカルくんの彼女になることが。
あたしとヒカルくんは能力的に違いすぎて
周りからの批判を真っ正面からくらうのが怖い。
あたしはただの臆病だ。
「ゆーみん…。」
晴香が隣から鋭い視線を送る。
「何が嫌なの?」
違うよ…晴香。
嫌なんじゃない、むしろ嬉しい。
嬉しいけどその分の代償があると
知っているから素直に喜べないんだ。
そのことをいくら友達だからって言うのは
自分の自尊心にかける事だ。
「あー来た来た!遅いよぉ!」
美々が手を振る。
その隣にスコップを持った浅見千尋がしゃがみこんでいる。
あたしと晴香は「昼休み、中庭に来い」と美々に言われここに至る。
「校外学習で6人で撮った写真を箱に入れて埋めようと思うの。」
「つまりタイムカプセルってこと?」
美々は無邪気にうなずく。
中庭にある大きな木の下だから、
いつか掘り起こす時に探しやすい。
浅見千尋は黙々とスコップで土を掘っていた。
「二人、ネイル汚れるけど大丈夫?」
えっ?と自分の爪を見た。
桃色のラメ入り。
ストーンとかは付けてないので、
汚れても付け直せばいいことだ。
「あたしらも手伝うよ。」
あたしと晴香はスコップを持つと浅見千尋と一緒に土を掘った。
「なんで今時の高校生がこんな地味な作業してんだろう。」
そう笑いながら。