Cry!Cry!Cry!
~Thihiro~
「先日、通り魔が出てきて南葉が怪我を負った。
まぁー、命に関わる心配はなかったんだが、
各自十分に気をつけて下校するように。」
帰りのSHRで担任が告げた。
警察は通り魔と判断したらしい。
あたしもちゃんと見たわけではないから父親と決めつけられないが。
帰り道、あたしは病院に向かった。
「南葉輝さんの病室はどちらですか?」
受付の人に教えてもらった病室。
ドアを開けると南葉くんは寝ていた。
頭には包帯が巻かれている。
来なかったほうが良かったかな?
あたしはそっとベッドの隣にある棚に青いハンカチを置いた。
すると、南葉くんと目が合った。
「あっ…。」
「起こしちゃったね。ごめん。」
南葉くんはゆっくり体を起こす。
「怪我のほうは平気?」
「はい…。すぐに退院できるみたいです。」
あれ…なんで敬語?
「ハンカチここに置いておくね。」
「ハンカチ…?」
南葉くんは棚に置いてある青いハンカチを見て首を傾げる。
「あたしが擦り傷をしたとき、貸してくれたでしょ?」
「あー…。」
あははと空笑いをする。
本当に分かっているだろうか?
まぁ、相手は怪我人だ。
そっとしておくべきであろう。
「じゃあ、行くね。」
「あっ…ちょっと待って!」
ドアノブに手を掛けたとき
南葉くんが呼び止めた。
「ええっと…」
南葉くんは困った顔で笑う。
「あの…
どちらさまですか…?」
その瞬間、物語の地点がぐるりと変わった。