white memory
私はバッグから鍵をだし、指輪の箱の横に置いた。
鈍く光る銀色の鍵。もらったときは、もっとピカピカ光ってた気がする。

「これは、返す…ね。」
部屋は静まり返って時計の秒針の音がやけに大きく聞こえる。

いまなら、まだ、戻れる。
そう思うけど…


「……今まで、ありがと。」

本当の理由なんて言えない。
あなたを困らせてばかりいる自分が嫌になった、なんて。
あなたは優しいから、こんなこと言ったら、自分を責めるでしょう。
だから、私のことは忘れて。
私なんかかより、ずっと素直であなたを困らせないような人が他にいるはず。
顎をさわるクセ、忘れちゃうくらいの人が。

最後の私の強がり、わかってね。
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