小悪魔は愛を食べる
「まだ春日先生が残ってるから、初音は先生連れて来て。俺は先に行って助けてるから」
「うん」
何度も頷く初音に念を押すように頭を撫で、絢人が音楽室の方向へ駆け出していった。そんなに遠くない。どうか間に合ってくれと願いながら、初音は今度こそ職員室のドアを開けた。
「春日先生っ!!」
「はい、なんです…か?って、どうしたんですか、里中さん」
職員室の中には春日しかいなかった。泣きながら飛び込んできた初音に、春日が驚きを隠せないまま駆け寄った。
「お、お、音楽室…華原さんが、大変、なんですっ!一緒に来てください」
言い切ると同時に、初音の体が後ろに仰け反った。
肩を掴む手を辿って後ろを振り向くと、できるならこの人にだけは知られたくなかったと思う人物が息を切らせて初音を睨みつけていた。
「音楽室、だな!?」
半分怒鳴りつけるみたいに問われ、初音は勢いよく何度も首を縦に振った。
「真鍋、姫華に連絡しといてっ」
「わかった」
真鍋にケータイを手渡して、壱弥は絢人が向かった方向へ走り出していった。春日が後を追って、走る。初音も追おうと廊下に出るが、走り出す前に腕を掴まれて立ち止まった。
「行くなよ」
「な、どうしてよ!だって、私のせいで」
「今行ってお前に何が出来んの。壱弥がキレるだけだから、お前は三島が来るまで俺と居ろ」
壱弥がキレる。その一言が、深く深く突き刺さる抜けない棘のように初音の心を痛めつけた。
いっそ殴られたのならば、今より少しは気が楽になるだろうかと考えて、また初音の胸がちくりと疼いた。
「うん」
何度も頷く初音に念を押すように頭を撫で、絢人が音楽室の方向へ駆け出していった。そんなに遠くない。どうか間に合ってくれと願いながら、初音は今度こそ職員室のドアを開けた。
「春日先生っ!!」
「はい、なんです…か?って、どうしたんですか、里中さん」
職員室の中には春日しかいなかった。泣きながら飛び込んできた初音に、春日が驚きを隠せないまま駆け寄った。
「お、お、音楽室…華原さんが、大変、なんですっ!一緒に来てください」
言い切ると同時に、初音の体が後ろに仰け反った。
肩を掴む手を辿って後ろを振り向くと、できるならこの人にだけは知られたくなかったと思う人物が息を切らせて初音を睨みつけていた。
「音楽室、だな!?」
半分怒鳴りつけるみたいに問われ、初音は勢いよく何度も首を縦に振った。
「真鍋、姫華に連絡しといてっ」
「わかった」
真鍋にケータイを手渡して、壱弥は絢人が向かった方向へ走り出していった。春日が後を追って、走る。初音も追おうと廊下に出るが、走り出す前に腕を掴まれて立ち止まった。
「行くなよ」
「な、どうしてよ!だって、私のせいで」
「今行ってお前に何が出来んの。壱弥がキレるだけだから、お前は三島が来るまで俺と居ろ」
壱弥がキレる。その一言が、深く深く突き刺さる抜けない棘のように初音の心を痛めつけた。
いっそ殴られたのならば、今より少しは気が楽になるだろうかと考えて、また初音の胸がちくりと疼いた。