小悪魔は愛を食べる
「そうだね。たしかに華原は愛されてると思う。けど、華原は本当にその愛に満足してる?華原を愛してくれる人たちは、華原の欲しい愛をくれる?ねぇ、気づいてないだろうから言うけど、華原、すごく物欲しそうな目してるよ」
芽衣の口が薄っすら開いて震えた。
何か言わなければ。思うのに、呆然と絢人を見つめることしかできない。
愛に、満足するとか、しないとか、そういうのは全て持っている人間の戯言ではないのだろうか。愛は満足するしないでは、はかれないのに。そもそも愛なんて、欲して、手に入るものでもないのに。ひどく、贅沢だと思う。けれど。
わたしが欲しい愛って、なに?
自分に問う。自らの深遠に問う。
真っ直ぐ見つめていた芽衣の視線が逃げた。芽衣の手の中で、絢人の指が動く。握り返されて、心臓が跳ねた。
「華原。欲しいなら、欲しいって言わないと、結局何も手に入らないんだよ」
触れている温かい手の温度だけが、彼のたったひとつの本当のような気がして、芽衣の涙腺がじんわり熱くなった。