小悪魔は愛を食べる
◆ 一章:恋に出逢う六月
1.日常の午後
新緑芽吹く初夏の匂いが心地好い午後、強い日差しを遮る校舎の横に付けられた非常階段の一部を占拠して、ここ、私立星ノ沢高校の三年生である生徒四人が昼食を広げていた。
「ねえ壱弥ーそろそろあたしと付き合おうよー」
ふざけ半分本気半分で、私服に金髪というやたら目立つ容姿の少女が唇を僅かに突き出して云う。と、すぐさま「ちょっとー」と、鈴やかで甘く可愛らしい声が横から入ってきた。
「イチ、ナナに手出したらもう口きかないから」
「芽衣ちゃん?俺が、七恵に、手出されそうなんだよ?」
胡坐をかいている自分の膝に座って寄りかかりながら雑誌を見て眉を寄せている芽衣に、壱弥が困ったように苦笑した。途端、正面から淡々とした口調の主が壱弥に呆れたとでも言いたげに溜め息一つ。
「馬鹿じゃない?ナナにあんたを襲う度胸があると思ってんの、まじ馬鹿」
「あのさー、姫華はなんでそう俺に冷たいの。なんで二回も馬鹿っていうの」
「ばかだから?」
「芽衣、お前に言われるとまじでショックだからやめて」
さっきから幾度も芽衣お気に入りのシトラスのシャンプーの香りが風にのって鼻腔を擽るのがなんとも好い気分だったのに、何このいじられポジションは。壱弥は項垂れたついでに芽衣の肩口に顎を乗せた。「イチ、じゃま」と芽衣が文句を垂れ、七恵が「芽衣だけズルー!あたしにもやってー!」と嫌味ではなくただ楽しそうに笑った。
「ねえ壱弥ーそろそろあたしと付き合おうよー」
ふざけ半分本気半分で、私服に金髪というやたら目立つ容姿の少女が唇を僅かに突き出して云う。と、すぐさま「ちょっとー」と、鈴やかで甘く可愛らしい声が横から入ってきた。
「イチ、ナナに手出したらもう口きかないから」
「芽衣ちゃん?俺が、七恵に、手出されそうなんだよ?」
胡坐をかいている自分の膝に座って寄りかかりながら雑誌を見て眉を寄せている芽衣に、壱弥が困ったように苦笑した。途端、正面から淡々とした口調の主が壱弥に呆れたとでも言いたげに溜め息一つ。
「馬鹿じゃない?ナナにあんたを襲う度胸があると思ってんの、まじ馬鹿」
「あのさー、姫華はなんでそう俺に冷たいの。なんで二回も馬鹿っていうの」
「ばかだから?」
「芽衣、お前に言われるとまじでショックだからやめて」
さっきから幾度も芽衣お気に入りのシトラスのシャンプーの香りが風にのって鼻腔を擽るのがなんとも好い気分だったのに、何このいじられポジションは。壱弥は項垂れたついでに芽衣の肩口に顎を乗せた。「イチ、じゃま」と芽衣が文句を垂れ、七恵が「芽衣だけズルー!あたしにもやってー!」と嫌味ではなくただ楽しそうに笑った。