小悪魔は愛を食べる
「壱弥から聞いたんだけどね、最近芽衣ちゃんの寝付がよくないみたいなのよ。けどここなら真紘さんいるし、もしかしたらこっちの方がいいかなって思ったんだけど」
「いや、壱弥で大丈夫だよ。それに、芽衣ちゃん取り上げたら僕が壱弥に恨まれるだろう?」
疑問系で納得させようとする真紘に、紗江子はそれでも不安気に眉を寄せた。
「うーん。それもそうなんだけど」
「紗江子さんは心配性だね。でも大丈夫だよ、紗江子さんの息子は母親よりよっぽど大人だから」
「どういう意味よ」
どこかからかう雰囲気を滲ませた言い回しに、美央が横でくすくす笑った。
怒るタイミングを失った紗江子が、「もう」と憤慨するふりをして真紘の部屋に向かって一人で歩を進めた。
結婚するまで住んでいた家だ。いくら改築を重ねて複雑に入り組んでいても、迷わない自信が紗江子にはある。
その自信の通り、紗江子は曲がり間違える事なく、目的の部屋の扉を横にスライドさせた。
「壱弥、起きてる?」