妹の恋人は姉の彼氏の従弟
風呂から出て
部屋に戻ると
部屋の様子が変わっていた

まずベッドが奇麗になっている

枕カバーもシーツも新しいのに
なっていて
綿毛布も新しいのに
なっていた

「あれ?」

私は部屋の入口に立ったまま
明るい部屋を呆然と眺めた

敷き布団は片付けられており
海堂はベッドに寄りかかりながら
数学の教科書を広げていた

「汗かいてただろ?」

「うん」

「だから」

「だから?」

「替えといた」

「うん」

「濡れたままじゃ
冷えるだろ」

「はい」

私は教科書から
目を離さずに
説明をする海堂彰吾が
なぜか年上の男に見えた

頼れる男と言ったほうが
いいのかもしれない

「学校…」

「何?」

海堂彰吾が顔を上げた

海堂の単語会話が
うつったのだろうか

私は単語でつぶやいていた

「あ…学校から
連れてきてくれたって
聞いたから」

「気を失ってたから」

「ありがとう」

「廉兄を呼び距離でもないし
タクシーで帰るにも
俺、あの時金を持ってなかったから」

海堂彰吾の視線が
教科書に戻った

「それとも加藤先生の車が
良かった?」

「え?」

「別に。
先生も送っていくって言ってたから」



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