妹の恋人は姉の彼氏の従弟
午後10時
私は数学の教科書を片手に
宿題を片付けていた

お風呂から出てきた海堂彰吾が
冷蔵庫からミネラルウォーターを出して
ペットボトルのまま
飲みながら
私の横に座ってきた

「な、何?」

「まだ寝ないの?」

「うん」

「宿題?」

「うん」

海堂の頬に濡れた髪の滴が流れていく

手首で滴をぬぐう仕草を
私はじっと見つめた

ずるい

ちょっとした行動でも
海堂彰吾の動きは
目を奪われてしまう

「海堂は宿題は?」

海堂から目をそらして
ノートを見つめた

「休み時間にやった」

「は?」

「休み時間」

「たった10分で終わるの?」

「終わる」

「なんで?」

「宿題は授業の復習だから」

「あっそ」

聞いた私が馬鹿だった

海堂は普通の人間じゃないのを
忘れていた

ずば抜けて
要領が良かった

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