乾いた瞳
プロローグ
何もかもを失った。
すべては壊れた。
私は曇った瞳で今日も世界を見下ろしている。
思い出を捨て、嘆息してから私は再び歩き出した。
「落としましたよ」
ふいに、背後から声。
ゆっくりと振り向くと、そこに長身の穏やかそうな金髪の男が立っていた。
私は男の目も見ずに、小さく頭を下げて返事をした。
「あ、どーも。」
男の手には、小さな白いくまのストラップ。
かつて、私の大切な人に貰った、大切なもの。
でも、もういらないから。
忘れるって決めたから。