乾いた瞳
「けど、それ落としたんじゃないんで。
いらなくなったから捨てただけなんで。
どっかそこらへんにでも投げ捨てといてくれます?」
無表情で淡々と、私は言った。すると、男の柔らかな声が返ってきた。
「ごみはごみ箱に、だよ」
「…………」
「地球に優しくしないと、さ」
ごみはごみ箱?
地球に優しく?
へんなひと。
そこで私は空を見上げる。
雪がちらちらと舞い降り、瞼(マブタ)に触れて溶けた。雪の冷たさに少しだけ顔が歪んだ。
「人間が地球に優しくするのは、地球のためじゃないんだよ?」
「え?」
男は目を丸くしてこちらを見ている。
そこで私はしっかりと男の目を見つめた。口に笑みを含みながら。