青春ing
 心中でブツブツ言っていると、背中にドスンと当たる“物体A”。こいつの正体が分かっていての、密かなあだ名だ。



「……おい、在(あり)。背後からタックルすんなって、いつも言ってるだろうが。」

「アハハ!健(けん)の身長がタックルしやすいのがいけないんだって!!」



 意味不明なことを言う、ふわりとした茶髪のこいつは山本在。高校に入ってから妙になつかれ、早三年目。オレより16センチも低い上に、成績も下から数えた方が早く名前を見つけられるこいつは、同級生というよりもむしろ弟的存在だ。



「ていうか、またフったのー?そろそろ“女泣かせの安海健”って通り名が付くと思うけどなぁ。」

「うっせぇぞ、チビ。お前こそ、そろそろ“蟻”に改名した方が良いんじゃないのか?オレとの身長差、全然縮まないだろ。」

「チビじゃないっつーの!3ミリ伸びて163.9になったっつーの!!」



 ギャーギャーと吠える在に「163はオレが中2の時の身長だぞ」と返してやると、真ん丸い目を悔しそうに細め、「“.9”が抜けてる!そこ重要なんだからな!!」と反論してきた。悔しかったら今すぐ179.5になってみろ、と言いたい。
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