青春ing
 ――あぁ、何か台風みたいな時間だったな。そう思いながら、差し入れ達を両手に席へ着く。すると、途端に運動部の男子達が絡んできた。



「良いなー、山沖!俺も女の子に差し入れもらいてぇし!!」

「だよなぁ……バレンタインも毎年凄いよなぁ。」

「俺らに女の子紹介しろっつーの!」



 いやいや、案外大変だよ。試合の度ごとに囲まれて休む暇がなくなるし、2月の例の日は、毎年家に帰るまで大量のチョコを抱えていかなきゃならないし。男子達の飢えた目を見ていたら、そんなことはとても言えない。だから、「ハハハ、良いでしょー」と笑っておいた。

 物心ついた頃からソフトに魅了され、女の子にモテてきたので、あたしは恋をしたことがない。自分を健気に応援してくれる後輩達は可愛いなぁと思うけど、そろそろ友達みたいに、彼氏がどうのとか、次の休みは何処でデートだとか、話してみたい。

 付き合うなら男らしくて、自分より強い人が良い。かといってムキムキすぎるお兄さんは嫌だし……はぁ。何か溜め息出てきちゃったよ。心で呟いていると、担任がやってきてHRの開始。話もそこそこに、あっという間に1限目の数学がスタートした。
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