青春ing
 先生は、先日の模試の結果がどうのこうの言っている。数学の、というかこの学校のトップは、やっぱり隣のクラスの安海君らしい。あの人だけは、何となく恐れ多くて呼び捨てにできない。何というか、脳の作りからして違うと思う。



「安海は東大でも行くのかねぇ。まぁ、あの頭なら何処の大学も入学してもらいたいだろうなぁ。みんなもあいつを見習って頑張れよ。」



 安海君をベタ誉めした先生は、あたし達に背を向けて、黒板に問題を書き始めた。噂好きの衣川さん達が、「安海君、またフッたらしいよ。しかも可愛い1年生だって」、「え、サイテー」と話している。可哀想だな、安海君。自分が知らない所でこんな風に色々言われてるなんて。衣川さん達も、本人に直接言えば良いのに。

 ――授業が終わると、谷口の周りには早速女子達が集まってきた。この人も大変そうだなぁ……多分真奈瀬ちゃん達の所に行こうとしてたんだろうけど、溜め息混じりに席に座り直している。あたしの所にも、そろそろ後輩達が寄ってきそうだ。

 次の時間の準備をしていると、「佐桜花、あんたにお客さん。珍しい子だよー」という香子の声がする。振り向いて、思わず首を傾げてしまった。
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