青春ing
「そういえばね、今日お姉ちゃんが帰ってくるんだ!お母さん達には連絡してないみたいで、サプライズなんだって。」

「へぇー……なな姉、名古屋の大学だっけ?」

「そうそう!残念ながら名古屋嬢にはなってないんだってさー。」



 なな姉とは、真奈瀬の姉・石川奈々瀬のこと。大学4年生だから、今は就活の真っ最中の筈だけど。もしかして、一段落したのかな。



「なな姉、もしかしてこっちで就職すんの?」

「うん、多分ね。一応名古屋でってのも考えてるけど、やっぱり地元が安心だって言ってた。」

「だろうね。手のかかる妹も居るし。」

「美隼酷いっ!私だって、あと二年したら二十歳なんだからね!!大人なんだから!!」



 俺だって同じだよ、という言葉を飲み込んで「はいはい」と返す。ふと前に目をやった、その時。見覚えのある人が、キャリーバッグ片手に大きく手を振っていた。



「まな!美隼!久し振り!!迎えに来てやったわよ!!」

「お姉ちゃん!」



 満面の笑みを浮かべて走り出した真奈瀬の後を、慌てて追いかける。目の前のことしか見えてない奴は、これだから困るんだ。忘れられたような気分になった自分に、小さく舌打ちをした。
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