青春ing
 真奈瀬はまるで俺の思いに気付いてないし、いつ今日の比奈子ちゃんとのいざこざのような事態が起こってもおかしくない。“だったら守れば良いじゃないか”という人が居るかもしれないけど、俺にできることは所詮、“幼なじみ”という盾を翳(かざ)してやることくらい。“恋人”っていうシェルターには、なってやれないんだよね。

 だったらいっそ……離れた方が、こいつのためになるのかな。遠くに居ても、守る方法があるかもしれないし。そう口にしかけた時だった。



「……お姉ちゃん、何でそんなこと言うの?私、美隼と居て迷惑したことなんて一度もないのに。離れる必要なんかないもん!」



 ――可愛らしい大きな目が、怒りに歪んでいる。驚く俺とは対照的に、なな姉はやけに落ち着いた笑みを浮かべた。



「……じゃあ決まりね。今まで通り側に居れば良いじゃない。まったく、ウジウジしてるから目障りだったのよね、あんた達!」

「え……」



 重なる俺と真奈瀬の声。呆気に取られる俺を見つめ、なな姉はニヤリと笑う。

 ――そっか、この人はこういう人だった。最初から俺に、“諦めるな”って言ってくれてたんだ。
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