青春ing
「ねぇ和屋君。昼休み終わるけど、何か用事あったんじゃないの?」

「あっ!そうだった!!あの、これ良かったら……ウチで作った余り物なんですけど、佐桜花さんに食べてもらえたらと思って。」



 和屋君が差し出したのは、透明な包みに入った一口サイズのお菓子達。ケーキみたいだけど、何なのかはよく分からない。



「ラスクなんですけど、味噌汁に使うお麩で作ってみました!おいしいんですよ!」

「え、何その家庭的な発想……凄いね、良いパパになれるよ……」

「アハハ!母親に習っただけですよー。」



 ――何か、女として負けてる気がする。いや、別に張り合ってはないけどさ。あたし、母親に“危ないから、あんたは包丁握っちゃダメ!”って言われるくらいの料理ド下手人間だし……香子がニヤニヤした視線を向けてくるけど、一体何が言いたいのか。



「佐桜花、良い機会じゃん!和屋君に料理教えてもらえば?今の時代、料理上手な女は少なくなってるってテレビで言ってたよ。」

「いやいや、だって和屋君に迷惑だし……」



 ちょっと、何言ってんの香子。心の中で言っていたら、「あ、俺は構いませんよ?」と好意的な和屋君。香子は視線で“ほら、オッケーしなさいよ”と訴えてくるし、何だか断るに断れない。



「……じゃあ、お願いします……」

「ほんとですか!?嬉しいなぁ!じゃあ、後からメールで詳しいこと決めましょうね!!失礼します!!」
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