青春ing
 予算内に収まったから、結局試着した全ての服と小物を買った。慣れない可愛いショップの袋が、何だか気恥かしい。

 香子に「折角だから、今着てみたら?」と言われて、地下街のトイレに入る。彼女の勧めで、今着ている薄黄色地に英字プリント(黒地で“PLAY BALL!”、いかにも球児らしくてお気に入り)のTシャツに、クリーム色のロングスカートと茶色の太めベルトを合わせることにした。

 着替えて出てくると、「おー、似合ってる似合ってる!」という相方の言葉。化粧スペースの鏡で確認してみると、新しい自分がそこに居た。

 ――あまり自己主張しないシンプルな格好で、悪目立ちすることもない。これまでは“男の子みたいな服装が楽で良い”と思って着ていたけど、この格好も楽だと気付いた。しかも、“いかにも女の子”って感じじゃないから、自分に合っていると思った。



「うん、店員さんと私の見立ては間違ってなかったね。佐桜花、今度からそういう“ゆるかわ系”目指してみたら?あんた背が高いから、ロンスカ似合うしね。」

「へぇー……170近い身長が初めて役に立った気がするよ……」



 今までは、男子より高くなるからヒールも履けないし、女の子らしさなんて求めても意味がないと思ってた。でも本当は、少し考え方を変えるだけで良かったんだね。ミニスカートやかかとの高い靴がなくても、自分の性別を活かしてくれる服装はいくらでもあるんだって、初めて知ったよ。
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