青春ing
 ふと、隣でクスクス笑っている奴に気付く。「何だよ」と不満も隠さずに問えば、相手も笑いを止めることなく話し始めた。



「いやー……やっぱ健には、ああいう感じで言い合いできる子だよなって思ってさ。」

「よせよ、あんなケバくてやかましい女。苛々するだけだ。」

「そうかなぁ?俺は、自然体の健が見れていいと思うんだけど。」



 おいおい、勘弁してくれよ……まぁでも、あんな風に自由気ままに生きられたら、ストレスは溜まらないんだろうな。少しだけ、あの奔放さは羨ましいかもしれない。

 ――今日も授業をこなして、さぁ帰宅だと思っていた時。返却された先日の実力テストの結果を持った在が、オレに泣いてすがってきた。成績をチラリと見て、絶句。このままでは、大学進学どころか卒業も危ういかもしれない。



「お前もやっと勉強する気になったんだな。」

「ていうか、これはやらざるをえないでしょ……ねぇ、琥珀ちゃん?」



 え、何で今そいつの名前を。そう思って親友の視線を辿ると、例の如く派手な金髪の女。奴も在と同じように、いや、それ以上に酷い成績が書かれた紙を手に苦笑していた。



「あのー……在君のついでで良いから、ウチも教えて欲しいなぁ、なんて……」

「……はぁ。まったく、しょうがないなお前らは。とりあえず、『京極』でご飯食べながら教えてやるよ。」

「お、おごるよ、健!」

「ウチもおごる!」



 馬鹿なりにお礼をと考えたのか、互いの財布を出して中身を確認し合う二人。まぁ、それくらいは当然だろう。こっちは自分の時間を使って、お前達に勉強を教えてやるんだから。

 『京極』は、学校から徒歩5分程の所にあるお好み焼き屋。制服で行くと学割になるから、高校生には持ってこいの食事処だ。安くておいしい上にメニューも豊富なので、この辺りでは人気の店の一つである。

 テーブル席に座り、オレは豚玉、在は餅チーズ、井上はシーフードミックスを注文。好みがあまりにもバラバラなので、密かに感心してしまった。三者三様とは、このことか。
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